今井新 初期作品集

現代美術の分野で活躍する作家・今井新の3つの漫画作品をご紹介いたします

●作品紹介

・『関内で暮らす二人について』(2020年)
東京都内に住むカップルのイマイ君とミキちゃんは横浜、みなとみらいのど真ん中・関内に引っ越すことに。「ミキと俺は違うヨコハマが見えてると思う」。そう言うと二人はある墓地に立ち寄った。
煌びやかな景色の分だけ影もある。関内で暮らす対照的な二人の生活。そこでは、互いの見えなかった部分が忘れ去られた横浜の風景とともに照らし出される。2020年、今井新が関内文庫での個展に出展した作品。

・『アイアムジョンキャントリー』(2015年)
僕の名前はジョン・キャントリー。イギリス人。いわゆる戦場カメラマンだ。日本では友人の名前「今井新」で活動している……なぜか?
日本の東北地方は2011年の震災後、独立の機運が高まり、ついには戦闘状態となってしまった。いまや独立を果たそうとしているこの地には、海外の武装組織もやってきて戦況は泥沼化している。その国を調査するため、僕は常磐自動車道を北上し、最前線である福島県に入ろうとしていた。
”F”として国外で高く評価される本作は現代美術家・今井新が描いた3.11以後の東北のパラレルワールド。そこにあるのは不都合なフィクションか、それとも――。

・『ここにあるだけの記憶を煙にからませて』(2013年)
「そう遠くもない昔、精華寮は確かに存在した。様々な国の人間が衝突を避けて暮らしたが、建物は燃え尽きてしまった。」
怠惰に生きるごく普通の青年・イマイはMr.コライというホームレスの老人から、精華寮なる建物に住んでほしいと依頼される。そこで青年が見たものは「生活そのもの」であった。
Mr.コライは言う。「故郷」とは、人の生まれ育った場所を示す言葉だ。だが必ずしも生まれ育った場所を故郷としなくても良いのだ。
かつて実在し、焼失した集合住宅をモチーフに現代美術家・今井新が描く、確かにそこに在った”生活の記憶”。

●登場人物

作者プロフィール

今井新(いまい あらた)

1992年港北ニュータウン生まれ。東京藝術大学大学院映像研究科メディア映像専攻修了。現代美術家・映像クリエイター・漫画家。フィールドワークを行って得た知見を、自分キャラ「イマイ君」を用いて表現する。
2021年、『アイアムジョンキャントリー』(英題『F』)が翻訳出版される。